ついに北海道以外は梅雨入りしましたねー。
梅雨はじめじめしてますが、雨に当たって花や緑が生き生きと輝いて見えるのが、心のオアシス的に好きです。
さて、生徒さんにもよく聞かれるのですが、「ガラスは継げますか?」答えはYESです。
以前もご紹介したかもしれませんが、あらためて方法など少し詳しく説明しますね。
ガラスは磁器のガラス質部分と同じで、割れた断面の素材そのものには凹凸がないので、とても継ぎづらいです。陶器や磁器のガラス質部分以外は顕微鏡などでおーきくしてみると、凹凸や穴など隙間があります。
そこに麦漆が入って接着の強度増すわけですが、ガラスは素材そのものに凹凸や隙間がありませんから(だから透明なんですけど)、割れた断面はまっ平です。なので、普通の生漆だけでは接着の強度が足りない場合があります。(厚みがある場合などそうですね。)
金継ぎ円家では、堤浅吉漆店さんのガラス用生漆、箕輪漆工さんのガラス用呂色漆、鹿田喜造漆店さんの絵漆を使用して、ガラスを継いでいます。特に堤浅吉漆店さんのガラス用生漆は合成樹脂を配合されていますが、食品衛生法の基準をクリアしています。箕輪漆工さん/鹿田喜三商店さんのは、そもそもの配合が極微量なので安全とされています。
手順としては下記のとおりです。
①下準備としてガラスの断面に金箔を貼ります。
ガラス用の生漆断面に塗り半乾きにして金箔を貼ります。
※オーブンで焼き付けをする場合もあります。
②ガラス用生漆で麦漆を作って接着します。
③十分に乾いた後、はみ出した麦漆削って、欠けがあればコクソで補います。
④コクソ部分を朴炭で磨いて滑らかにし、切子、錆でさらに滑らかにしていきます。
※切子、錆にもガラス用生漆を使用します。
⑤滑らかになったら、ガラス用呂色漆で継いだ部分をなぞっていきます。
蒔けるくらい滑らかになるまで2回から3回繰り返します。
⑥ガラス用絵漆を塗って蒔きたい金属の粉を蒔きます。
⑦乾いたら粉固めをして、さらに乾いたら鯛牙で磨いて仕上げます。
最初の下処理の金箔を貼る以外は、通常の金継ぎと同じです。
蒔く金属によって金箔でなくて、銀粉で蒔くなら銀箔、経年劣化が嫌だったらプラチナ伯などを貼るのも良いと思います。
今回は、金で蒔きたかったので金箔を貼りました。
このように、断面が見えるので3D効果のように金、呂色漆が見えます。呂色漆の代わりに色漆を使ってもいいかもしれません。ただし、色漆は色数が少なく、色を作る時は配合が難しいので(乾いた時に思った色にするために、配合別の色見本を作る必要があります。)根気が必要ですね。
そして私見ですが、そもそも、金継ぎは急いでやるものでは無い気がします。
漆がきちんと定着するのを待って、次の段階に進む。丁寧に繰り返して仕上げをしていく。
蒔く段階の手前で、どれだけ滑らかになっているかが仕上がりの美しさを左右します。
(何回やれば良いですか?の質問もよくありますが、答えは滑らかになるまでです。)
忙しい時代だからこそ、贅沢な時間の使い方だと思います。
大切なものを、時間をかけて美しくre bornさせる。金継ぎの醍醐味ですね。